いい映画(というか、好みの映画)は出だしでわかる。この映画がまさにそれだった。
主人公のアルフレード伯爵(モーリス・シュヴァリエ)。赴任先のパリで人妻と姦通。彼女がピストルで自殺を図る。夫がやって来る。進退窮まる伯爵。しかし、ピストルに弾は入っていなかった…というこのテンポの良さ。
そしてこのモーリス・シュヴァリエ、いかにも遊び人って感じの雰囲気を漂わせている。とにかくモテて仕方がないっていう顔。決して美男子ではないのに、私は古今東西、こういう羽毛より軽い男にめっぽう弱い。いっぺんで好きになってしまう。
場面変わって、架空の国・シルヴァニアの女王・ルイーザ(ジャネット・マクドナルド)の寝室。女王が目を覚まされました。はい、ここで私はやられましたね。ひとめで分かるのだ、スターというものは。ジャネット・マクドナルドを見たのはこれが初めてだけれど、その正統派の整った顔立ち、華奢な肢体、見事なソプラノ。そして演技の的確さ。コメディエンヌぶり。これが映画初出演っていうんだから驚き。
この女王、いまだ独身なのが悩み。みんな恐れおののいてしまうのだ。女王の結婚はもはや国内最大級の問題になっている。「どうして私には結婚相手が見つからないの?顔だって悪くないし、脚には自信があるわ」とドレスの裾をちょっと持ち上げて家来たちに見せるところなんか、何ともかわいらしい。
そこにやって来たのが、パリから醜聞の処分を受けるために帰国した軽薄なアルフレード伯爵。二人はめでたく恋に落ちます。この映画、オペレッタという形式で、つまりは踊りがないミュージカルみたいなもんなのですが、二人が掛け合いで歌う主題歌(「ラヴ・パレード」でいいのかな)は、一度聴いたら忘れられなくなります。
またここが粋なんだなー。本来ならば処罰しなければならないアルフレードを好きになっちゃった女王。何とかしたい。そこで彼はアドバイスする。「私が女王ならこういう命令を下すでしょう」。すなわち、「私のそばにいなさい」と。女王はその通りにする。アルフレードは「女王の仰せのままに」と答える。
このあたりで私は気づいた。このモーリス・シュヴァリエとジャネット・マクドナルドのコンビ、私のアイドルであるフレッド・アステアとジンジャー・ロジャースというカップルの先祖(言いすぎ)みたいな感じだ。ダンスはないけど、その呼吸のぴったりさ加減、可愛らしさがもうね、そりゃあこの映画、好きになるわけだよ。
②につづく。