後半は二人が結婚してからの話になりますが、悲喜劇、なかなか奥が深い。
女王は公務で多忙。夫であるアルフレードは何もすることがない。女王の命令がなければ、食事一つできない。政策に口を出すことも許されない。壊れたライターを見つけて、「やることがあった(午後はこれを修理しよう)!」と大喜びする姿があわれ。女王からは、「夜のために鋭気を養って、昼寝は忘れないで」みたいな手紙が届けられる。アルフレードはげんなりする。
つまり女王は、何もするな、ただ私の夜のお相手という役割をしっかり勤め上げよ、という考えなんだなー。それにしてもひっでえ話(笑)
アルフレードは別れを決意する。圧巻は、国王夫婦ご臨席というふれこみで開催されるオペラ鑑賞の場面。女王は笑顔で列席するように命じるものの、アルフレードはやって来ない。ロイヤル席には暗い顔の女王一人。民衆は不審に思う。そこに、満面の笑みでアルフレードがやってきて挨拶をする。ここで女王は、どうしても笑顔が作れないんですね。
いろいろ非難もありましょうが、ここ、男女の本質的な違いを端的に示そうとした場面だと思います。つまり、公私の区別。仕事のためなら割り切って笑顔になれる男。愛や不安といった感情のために、ぎりぎりで職務を全うできない女。まあ、エリザベス一世みたいな女傑はそうそう出るわけではないということだ。
結局、最後はメデタシメデタシで仲直りするのですが、立場は完全に逆転します。女は男に従うべし、みたいな価値観が出ていることに非難もありましょうが(しつこい)。女王はアルフレードに「私が国王ならこういう命令を下します」と言う。すなわち「私のそばにいなさい」「この部屋を出て行ってはならない。朝も昼も夜も」。アルフレードはその通りにルイーザに命令する。「国王の仰せのままに」と彼女は答える。
前半と後半のクライマックスに、それぞれ二人の立場を変えて同じセリフをしゃべらせる、何とも粋じゃありませんか。
ルビッチの作品らしく、ほんと、色っぽいコメディです。大好き、こういうの。1929年の作品なのに入浴シーンが! ジャネット・マクドナルドの脚が浴槽に入っていくのが映されて、あ、かがむ! と思った瞬間に今度は湯船から出た肩のラインを映す。さすが。当時の観客はさぞかしドキドキしたことでありましょう。