高山京子のブログ

高山京子(詩•日本近現代文学研究)のブログです。基本的には文学や映画のお話。詩作品はhttps://note.com/takayamakyoko/へ。Xは@takayamakyokoへ。

2023-07-01から1ヶ月間の記事一覧

佐分利信『心に花の咲く日まで』(1955)

むかし、日本映画専門チャンネルで観た。大映・文学座。監督が佐分利信である。脚本は田中澄江で、文学座総出演(杉村春子の伝記なんかを読んでいると、舞台のためにこうやって映画で稼いでいたんだなとか、ついつい余計なことを考えてしまう)、しかしクレ…

渋谷実『もず』(1961)

淡島千景週間……(たぶん、すぐ終わる)。 1961年の作品だが、この映画が完成するまでの、本来キャスティングされるはずであった杉村春子や岡田茉莉子を巻き込んだすったもんだを知ってしまうと、素直に楽しめない映画。しかし、そうした楽屋ネタで左右される…

成瀬巳喜男『鰯雲』(1958)

2012年の6月24日、今は無き銀座シネパトスで観た。もう10年以上前である。たしか、成瀬巳喜男特集みたいなものをやっていて、同時上映は「杏っ子」だったが、必ずしも成瀬の代表作とは言えないこの作品をなぜわざわざ観に行ったのかと言えば、はい、わが淡島…

サミュエル・ベケット『ゴドーを待ちながら』

不条理劇の最高傑作と呼ばれるこの作品を、私は長い間読んでみたいと思っていた。そして数年前、ついに読んだ。 感じたことは二つ。上演されている、劇として観たいと思ったこと。日本ではすまけいの舞台が有名だが、確かに、これは並大抵の俳優ではとてもじ…

きょうでブログ開始から半年だそうです

はてなブログからお知らせがあり、ここを開設してからきょうでちょうど半年だそうです。雑多な文章を放り込んでいるだけの倉庫のようなブログですが、一度でも読んでいただいた方には感謝の気持ちしかありません。 本当に本当にありがとうございます。 私事…

生きろ。いや、生きようね。

私は、子どもの頃から、潜在的な自殺願望に悩まされてきた。以前にも書いたが、それが顕在化したのは、大学3年、付き合っていたひとに捨てられたときだった。 それからもう20年以上が経つ。その間、私のすべての意識は、ただ、生きることに傾けられてきた、…

日記から(ブルース・ベレスフォード『ドライビング Miss デイジー』とハービー・ハンコックのことなど)

2018年の日記から。 8月28日 『ドライビング・ミス・デイジー』、なかなかよかった。 こういう映画を作ることのできるアメリカの懐の深さ。そして、ハンス・ジマーのあのテーマ曲。ジェシカ・タンディ(デイジー)とモーガン・フリーマン(ホーク)の友情が…

スタンリー•キューブリック『現金に体を張れ』(1956)

私は別に映画を作る人間ではないけれど、嫉妬するほど「天才」を感じるのは、ウディ・アレンとスタンリー・キューブリックの二人である。これもすごい映画である。『博士の異常な愛情』のときも感じたが、ほんと、身も蓋もない。徹底している。救いようがな…

太宰治『人間失格』と世間と怒りと

太宰治の『人間失格』を読んでいて、次の部分にさしかかると、私は背中が泡立つ。 世間とは、いったい、何の事でしょう。人間の複数でしょうか。どこに、その世間というものの実体があるのでしょう。けれども、何しろ、強く、きびしく、こわいもの、とばかり…

日記から(ウディ・アレン『アニー・ホール』やカポーティ『叶えられた祈り』のことなど)

9.8 生徒たちが、私のことを、「俺たちの言いたいことを全部代弁してくれる人」と言っていたらしい。何をもってそう思われたのかはわからないが、それは私にとって最大級の誉め言葉だと思った。 帰宅し、『アニー・ホール』を見た。好きか嫌いかと言ったら、…

スティーブ・クローブス『恋のゆくえ ファビュラス・ベーカー・ボーイズ』(1989)

(邦題の「恋のゆくえ」が何ともウザいが)これまた大好きな映画。 やはりジャズはよい。よいのだから仕方がない。大人のほろ苦い映画。恋の映画というより、もっとシビアなショービジネスの世界の悲しさ、兄弟の対照性が面白かった。 ジェフ&ボーのブリッジ…