高山京子のブログ

高山京子(詩•日本近現代文学研究)のブログです。基本的には文学や映画のお話。詩作品はhttps://note.com/takayamakyoko/へ。Xは@takayamakyokoへ。

2023-01-01から1ヶ月間の記事一覧

堤幸彦『自虐の詩』(2007)

中谷美紀は『嫌われ松子の一生』からすっかり演技派ということになり、ただその演技がいかにも女優という感じでときどき鼻につくところはあり、この作品もまたそういう要素が結構強いのだが、要所ではさすがだなあと思わせるところがある。それについては後…

エルンスト・ルビッチ『ニノチカ』(1939)

1939年のアメリカ映画で、主演はグレタ・ガルボ。脚本にビリー・ワイルダーの名前あり。時代を色濃く反映した、でも抱腹絶倒のコメディ。終わるのが惜しい、と思う映画なんて、人一倍根気のない私には稀有な事例である。 もうね、ストーリーだけでなく、なん…

ジョセフ・フォン・スタンバーグ『嘆きの天使』(1930)

謹厳実直な教師が踊子の虜となり、人生を破滅させる。言わずと知れた、マレーネ・ディートリッヒの出世作。 いやはや、ぶったまけるようなすごい映画だった。恐ろしく残酷な悲喜劇。ラート教授役のエミール・ヤニングスの怪演。冒頭からやられました。謹厳実…

ジャック・フェデー『ミモザ館』(1935)

ジャック・フェデーにしろ、ジュリアン・デュヴィヴィエにしろ、ルネ・クレールにしろ、戦前のフランス映画というのはもう言うことなしに素晴らしい。何を観ても、阿呆のように、すげー、としか思わぬ。 で、フェデーの『ミモザ館』である。大好きなフランソ…

エルマンノ・オルミ『木靴の樹』(1978)

福島県のいわき市に住んでいたころ、ちょっと風変わりな先生がいた。公立学校を停年退職し、非常勤で来ていた人だったが、珍しいぐらい本物のインテリだった。私はその頃、そういう人にとても飢えていたので(たまたま、毎日の同僚との会話が、仕事以外では…

伊藤大輔『王将』(1948)

今さら説明するまでもない、伝説の棋士・阪田(坂田)三吉の一代記を映画化したものであるが、私にとっては、阪東妻三郎なる役者を初めて見た作品として、深く心に刻まれている。はっきり言って一目惚れ。 こんな役者、後にも先にもいない。何を書いても、そ…

松田定次『丹下左膳』(1952)

阪東妻三郎主演、そして個人的には、淡島千景の時代劇初出演の作品としてとして特筆されるものである。 しかしこの映画、時代劇と言ってもいかめしいものではなくて、テンポがよく、何と言ったらいいのか、初期の映画、いや活動写真的な、スラップスティック…

ジョー・ライト『プライドと偏見』(2005)②

①からのつづき。 しかし映画は映画でこれ楽しめばよいわけで、実際、面白かった。これはイギリスじゃなきゃできないよなあと思う。実際、制作も出演者もほとんどすべてイギリス人。アメリカじゃどうにもならねえっす。伝統の重み。あとは、自然であるという…

ジョー・ライト『プライドと偏見』(2005)①

以前、たまたま『原作と同じじゃダメですか?』(発行は2013年。絲山秋子の『イッツ・オンリー・トーク』を映画化した『やわらかい生活』の脚本をめぐる訴訟をまとめたやつで、シナリオ作家協会が作ったやつだから、まあ、公平とは言いがたいのですが)とい…

リンゼイ・アンダーソン『八月の鯨』(1987)

故・淀川長治氏がこの映画を絶賛していたように、わたくしも、まず、この映画を企画したすべての方々に敬意を表したい。 サイレント時代の大女優リリアン・ギッシュ(当時93歳)、そしてアメリカ映画が誇るこれまた大女優のベティ・デイヴィス(当時79歳)が…

フランク・キャプラ『オペラハット』(1936)

トランプ政権以降、すっかりお目にかかれなくなってしまったようなアメリカを、久しぶりに見た感じがしましたよ、この映画で。 これは原題が“Mr. Deeds Goes to Town” で、なぜこういう邦題が付いたのかと思うのですが、これより少し先に日本で公開されたフ…

市川崑『プーサン』(1953)

怪作である。渋谷実にも一脈通ずる、都会派の、諷刺のきいた喜劇。ただし、喜劇と言っていいのだろうか、と躊躇する場面がいくつもある。いわば悲喜劇なのである。だから、決して明るくはない。そこがすごいのだ。 私は伊藤雄之助という俳優が大好きで、それ…

小津安二郎『浮草』(1959)

大映である。大映カラー(!)である。カメラは宮川一夫である。赤と緑の対比の色が大変鮮やかである。 オープニングで、固定された(当たり前だけど)微動だにしない白い灯台が何度か映される。そこに、旅芸人の一座を乗せた船の舳先が揺れながら入って来る…

渋谷実『悪女の季節』(1958)

最初に断っておくが、渋谷実監督で、我が山田五十鈴様と岡田茉莉子嬢が出演しているんだから、この映画、面白くないわけがない。渋谷実の喜劇というのは、ベタついていないので、私はとても好きである。 ブラックコメディとは、当たり前ですが、一般的には笑…

川島雄三『洲崎パラダイス赤信号』(1956)

典型的な、日本の道行き映画。どうにもこうにも別れることができない男女。確か成瀬己喜男が、『浮雲』のゆき子と富岡が別れられなかったことを、体の相性がよかったからだと解釈していて(この辺かなり記憶が怪しい。高峰秀子の証言だったか)、思わず膝を…

エリア・カザン『波止場』(1954)②

①のつづき。 これは今後の私自身の研究課題のひとつでもあるわけですけど、キリスト教世界において、やはり聖母マリアと、マグダラのマリアは、女性像の究極というか、原型なのだろうな、ということ。『波止場』も、それにのっとっているということを嫌でも…

エリア・カザン『波止場』(1954)①

ニューヨークの港湾労働者の世界におけるマフィアの暗躍と、それに立ち向かう主人公の青年を描いた物語で、この年のアカデミー賞では作品賞、監督賞、脚本賞(バッド・シュールバーグ)、主演男優賞(マーロン・ブランド)、助演女優賞(エヴァ・マリー・セ…

エルンスト・ルビッチ『ラヴ・パレード』(1929)②

後半は二人が結婚してからの話になりますが、悲喜劇、なかなか奥が深い。 女王は公務で多忙。夫であるアルフレードは何もすることがない。女王の命令がなければ、食事一つできない。政策に口を出すことも許されない。壊れたライターを見つけて、「やることが…

エルンスト・ルビッチ『ラヴ・パレード』(1929)①

いい映画(というか、好みの映画)は出だしでわかる。この映画がまさにそれだった。 主人公のアルフレード伯爵(モーリス・シュヴァリエ)。赴任先のパリで人妻と姦通。彼女がピストルで自殺を図る。夫がやって来る。進退窮まる伯爵。しかし、ピストルに弾は…

川島雄三『女は二度生まれる』(1961)

大好きなんです。川島雄三。この作品、後から知ったのですが、成人指定だったんですね。というわけで、どうしてもそういう内容になりますのであしからず。しかし 今となっては「え、どこが?」という感じだし、むしろかなりよくできた喜劇だと思います。 川…

木下惠介『女の園』(1954)

脚本も木下惠介。わかってはいたけれど、やっぱり、傑作。木下惠介の才能って、監督よりも脚本にあるような気がした。まあ、門下に山田太一がいるわけで……。何というか、これぞ、「ドラマ」という感じなのである。 配役も見事。もうありとあらゆる意味でみん…

フランソワ・トリュフォー『アデルの恋の物語』(1975)②

この映画において、イザベル・アジャーニが偉かったのは、たんなる恋愛物語にしなかったことですね。女性の自立とかいう問題を抜きにしては語れない。 はっきり言って、アデルの最大の不幸は、父親がヴィクトル・ユゴーだったということ。スクリーン上には一…

フランソワ・トリュフォー『アデルの恋の物語』(1975)①

小・中学生のころ、『スクリーン』や『ロードショー』などの映画雑誌を熱心に買って読んでいた私にとって、イザベル・アジャーニという女優はその頃からすでに別格の存在だった。ちょうど、『カミーユ・クローデル』が公開された時期(年がばれる)と重なっ…

高山京子、はてなブログはじめました。

高山京子です。はてなブログはじめました。よろしくお願いします。 Tumblrからの引っ越しに失敗したので、しばらくは過去記事をピックアップして載せていきます。 詩は高山京子|noteから。