<第一話 耳を噛みたがる女>
増村監督で主演は若尾文子(母校の先輩であります)。
男を手玉に取る銀座のホステス、若尾文子。同級生からも金を巻き上げ、そのセールスマンに吐かせたセリフ、爆笑しました。
「なんだい、ポンコツ車のくせに、新車みたいな顔しやがって!」
この直前、文子は、自分が性病であることを匂わせて、関係を持つことをやんわりと断るのである。でも、貰うもんはしっかり貰います。
それにしてもまあ、大映映画の女の強いこと。冒頭の、文子と妹が交わすやりとりも楽しい。「あたいも姉ちゃんみたいになりたい」「もっと胸が大きくなってからだよ」「何か入れればいいんだろ?」みたいな。
若尾文子が普段着る服がいつも一緒で、文字通りの一張羅なのが妙にわびしかったりする。
ラストはネタバレになるので言いませんが、一瞬、観る側の判断を迷わせる。さて、男が勝ったのか、女が勝ったのか。
<第二話 物を高く売りつける女>
この題名からしてもうね(笑)。これが一番面白かった。『黒い十人の女』で惚れてしまった船越英二(私が物心ついたときには「ポリデント」のおじいちゃんだったけど)が、これまた似たような、何とも言えない、羽毛のようにふわふわした男として登場してくる。
さすが市川崑、映像が違う。幻想的な場面と、リアルの対照。
とにかく、謎の、色っぽい未亡人?の山本富士子と、すっかりフラフラとなってしまう船越英二が面白すぎる。実は詐欺師、闇商売の山本富士子が、上品な未亡人から、一転して蓮っ葉な口調になるのも面白い(ただし、巧いとは言いがたい。『夜の河』でもそうだけど、この人はやっぱりいい人の役が似合う。『日本橋』もそう。根っからのいい人、真面目な人なのだというのが伝わってきます)。
これだけが、三作のなかで唯一のハッピーエンド。というかロマンチックコメディ。これだけ日本の映画、風景でありながら、ハリウッドっぽい芥川也寸志の音楽が妙にマッチしている。セリフもそう。 船越英二の役は、ぜひ、ケーリー・グラントあたりにやってもらいたいです(死んでますけど)。
<第三話 恋を忘れていた女>
川崎敬三が出ている。私はこういう、浮草みたいに頼りない、フラフラした男が好きである。もう理屈抜きに好きである。自分がフラフラしているからだろうか。